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物流コスト削減を食品業界で実現するには?現状や削減方法を解説!

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消費税増税前2019年春、食品メーカー各社は一斉に自社商品の値上げに踏み切りました。

飲料・アイス・即席麺・スナック菓子・缶詰類や乳製品など値上げ品目は多種多様に渡り、食品メーカーだけに留まらず外食産業や日用品メーカーにまで及んでいます。

なぜこの時期に集中したかというと、10月に消費増税が値上がりするため先立って値上げしておかないと便乗したとのイメージがつくことが一因として考えられます。

しかしそもそも根本的な原因は原材料費と共に物流コストが毎年じりじりと上昇しており、メーカー側がこれ以上吸収できないとの判断からです。

今回は商品の値上げをせざるを得ない、食品業界の物流費削減のポイントと方法を紹介していきます。

食品業界における物流コストとは

食品業界では物流工程に一定の人員を常時必要とすることが多いので、自社の社員によって物流業務全般を行なう「内製化」している場合がよく見られます。一般的に行なわれている物流工程とは、発注・入荷・検品・保管・受注・仕分け・加工・出荷・配送といった作業が毎日繰り返されています。

これら一連のルーティンワークに掛かるすべての費用が物流費として管理されるべきで、内製化している場合は各工程別の費用をしっかり把握しておく必要があります。

外部委託している場合は請求書等でその費用は明確に把握できるので、把握に費やす労力と時間はほとんどありません。

食品業界の物流コストの現状

現在食品業界における物流費は年々増加の一途ですが、これは物流に掛かる人件費の高騰と人材不足が主な要因で、その他燃料費の高騰や保管コストの上昇などもあり、物流費を削減することは利益獲得のための重要事項となっています。

特に精密機器メーカーのように単価の高い商品を扱う業界は、物流コストの売上対比が平均1.78%と極端に低くなるのですが、食料品のような単価の安い商品を扱う業界は物流コストの売上対比は要冷蔵で7.72%、で常温でも6.28%と高くなります。
(参考文献:日本ロジスティクスシステム協会 荷主の物流コスト~2016年度物流コスト調査より~ )

企業内に輸送手段や倉庫をもつ企業は物流費を社内物流コストといい、輸送を外部に委託したり、倉庫を借りて商品を保管したりしている企業の物流費を支払い物流コストといいますが、どちらにせよ自社の状況に応じて、最適なコスト管理を実現しないと容易に利益を得ることができない状況になりつつあります。

食品業界が直面している問題点

食品業界が直面している大きな問題点として、今後も物流コストが上がり続けるということが挙げられます。

深刻なドライバー不足に加え、働き方改革に伴うコストアップやガソリン等の燃料費アップなど、今後も物流コストの上昇トレンドは続くことが予想されます。

食品メーカーとして商品を届けるためには、物流企業に今後上昇していく一定の対価を払うことは避けられないため、負担の一部を消費者に転嫁していく流れは加速していくでしょう。

関連記事:小売業での物流費削減の最適なやり方とは?見直すべきポイント4選

物流コスト削減への第一歩

物流コストの削減といってもどこから手をつけたらよいか、わからない事が多々あります。業界や企業によって物流業務に掛かる最適なコストは異なりますので、自社の最適なコストはどのぐらいなのか?を把握しておくことが絶対的な条件となります。

全業種の物流費の売上対比はここ10年程4.6%~5.0%で推移していますが、食品業界は先ほど記した通り全体平均より2%~3%高い水準となっています。

社内の物流コストの細目化

物流費と聞いてまず思い浮かぶのは輸送費と人件費になるでしょうが、もちろん掛かる費用はこれだけではありません。

特に社内で輸送手段を持っている場合、輸送費にも内訳が生じ、車両費用(メンテナンス代や保険代等)・燃料費・高速道路代・駐車場維持費など気をつけなければなりません。

また多くの車両を扱うのなら出入りに伴うバース管理が効率的な運用には欠かせませんので費用が掛かるでしょう。

さらに倉庫を持っている場合は管理に伴う人件費、梱包やラッピング作業があるなら梱包資材費など多くの費用が社内物流コストとして発生します。

削減するためにはこういった細かい費用を、一括りにして製造原価として処理するのではなく、一つ一つの経費をしっかり把握することから始まります。

物流コスト全体像の把握

支払い物流コストには輸配送にかかる費用をわざわざ細分化する必要がないため、管理しやすくなります。

商品の保管のため倉庫を借りるなら倉庫レンタル料、商品出荷時に袋詰めやシュリンク包装・パッキングをするなら流通加工料が支払い物流コストに含まれます。

社内物流コストと比べて委託した会社からの請求書が費用となりますので、経費として管理しやすい反面、削減するためには委託会社との価格交渉・業務内容変更か業者の変更といった手段しかなくなります。

物流コスト削減の具体的な目標設定

物流費削減のための具体的な目標を設定するとき、見えない物流コストを可視化する必要があります。物流に関わる人件費、輸配送費、保管・加工費、資材費など、すべてのコストを洗い出し把握します。

さらに過去から現在までのコストを分析し可視化して、売上や経費に占める物流比率を把握します。可視化の際に現在よく「KPI」という言葉がでてきますが、これは「重要業績評価指標」の意味で、具体的には保管効率・積載率・人時生産性・誤出荷率・数量当たり物流コスト・得意先別物流コスト・商品別運賃・クレーム発生率が挙げられます。

「KPI」を把握し分析することで、今後どこからメスを入れていけばよいのかの優先順位を決めることができ、各企業にあった具体的な目標を数値化できるのです。

関連記事:物流コストを削減する方法とは?基礎知識と事例を紹介!

物流コスト削減のポイント

昨今の環境下の中では食品メーカーにとって利益を出すためには、物流費を削減することが至上命題となっていますが、いったいどのようなポイントがあるのでしょうか?

倉庫の在庫管理

食品業界の倉庫管理は主に冷凍倉庫と湿度と温度を24時間一定に保つ定温倉庫、常温倉庫に分けられます。

冷凍倉庫は長期保存できる冷凍品を扱いますが、管理が不十分だとデットストックとなり無駄な費用が掛かります。また無駄な在庫は無駄なスペースを作り、保管が必要な商品を置いておくスペースがなくなることからも管理不足は二重のムダの原因となります。

また定温・常温倉庫では先入れ先出しが基本で、これが守られないと賞味期限の短い商品はすぐに不良在庫となることから、徹底した在庫管理が必要になります。

物流センターの見直し

物流センターの見直しは、大きな食品メーカーや食品会社に有効な経費削減方法といえます。配送先や納品先の分布状況を把握し、エリア内での物流拠点を集約することでセンターの賃料・運営諸経費、管理コスト、人件費、在庫の圧縮に効果を発揮します。

物流センターが減ることで配送距離が伸びて輸送料が増加するデメリットもありますが、企業活動に関わるトータルコストを削減するための施策としては有効な手段です。

その他

運賃・倉庫保管料・倉庫作業量の見直しやITシステム導入、各作業におけるオペレーションの改善による効率化といった方法で物流コスト削減を図ります。

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物流コスト削減の方法

KPIを把握し目標を数値化したら次に現場での非効率な動きや配置を見つけ出す事で、業務改善・効率化を図ります。

商品管理の効率化

商品管理を効率化することで、物流コストにおける人件費や保管費を削減できます。商品管理にはこまめな在庫管理が必須です。

基本先入れ先出しの原則に従って商品を回転させますが、回転が悪くなってしまうと倉庫にデッドスペースが発生し賞味期限の短い商品が保管できない状態もあるかもしれません。

倉庫は大きければいいというものではなく、大きければそれだけ無駄な費用がかさむだけなので、効率の良い倉庫利用を実施し保管費の適切化を図りましょう。

さらに倉庫内が効率的に管理できる配置になっているか、一区切りの管理業務にどれぐらいの時間を要するか、習熟度に合わせた指標を設けておくことも効率化につながります。

配送業務の効率化

配送業務の効率化は主に物流コストにおける人件費の削減に効果があります。

配送業務で効率化できる作業は主に荷役作業の現場です。必要な備品の置き場所や移動の際の導線、使う頻度にあわせた配置など実際作業する者の立場で最適・最速のオペレーションを構築することが大切です。

商品管理もそうですが、オペレーションの改善のためには日頃から作業している者を、常に「これが最適か」という疑問を抱きながら注視することが必要です。

社内システムの向上

社内システムの向上は、在庫情報や仕入れなどの商品情報を効率的に管理することにつながり、トータルコストの削減が可能です。

効率を追求するこの削減方法はITを活用することで、人が行なうと必ずいつか起こるヒューマンエラー(うっかりミス)の防止や作業時間の短縮に圧倒的な正確性が加わります。

それだけでなくデータ収集や一層の作業効率化に役立つことが期待できますが、そのためのシステム費はかなりの出費になることが予想されますので費用対効果が最も高い部分にだけIT化を進めることも大切です。

外部委託の検討

これまで紹介してきた方法は膨大な時間と労力、費用が掛かることが少なくありません。作業マニュアル作成や新規のシステム導入などに費やされる時間とお金は、本業を圧迫する可能性もあります。

自社にしかできない業務や直接すべき作業はそのままにしておいて、その他の管理に時間と労力を割かれてしまう作業や必要人員に季節変動がありどうしてもコストが掛かってしまう業務などを、外部の企業に委託することはコスト削減のため検討に値します。

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外部委託のメリット・デメリット

それでは外部の企業に委託した場合、どのようなメリットとデメリットがあるか見てみましょう。

倉庫業者の場合

倉庫業務を外部委託する最大のメリットはなんといっても在庫管理やオペレーションの効率化などの管理業務から解放されることにあります。

また自社で倉庫を運営するならただでさえ人材確保が厳しくなっている上、教育にも時間が掛かります。

その点倉庫業者はもちろん専門のノウハウを持っているので、人材面・教育面・在庫管理もシステム化されています。

さらに注文の増減や季節変動といった繁忙期と閑散期にも柔軟に対応でき、コストの削減が可能になります。

逆にデメリットは自社内での情報管理を徹底しつつ、倉庫業者とのルールを明確化し落とし込んでおかないと、情報漏えいのリスクがあります。

さらに一度委託してしまうと自社での内製化が厳しく、「製造から販売まで一貫したサービス」といった顧客満足に訴えかえるブランディングが難しくなります。

また一般的にはトラブルがあった時の対応が、自社倉庫に比べると遅くなる傾向にあります。

配送業者の場合

日配食品のサイクルの特徴として、納品先からの受注が午後に締め切られ、その日の夜までに仕分け~納品までを完了する流れになっています。

そのため夕方からの人員を増やす必要があるのですが、営業部門や製造部門の社員たちが業務終了後行なうことも少なくありません。

こういった場合どうしても長時間労働が避けられず、また本業の営業なども時間的制約があるなど効率が悪さが目立ちます。

外部委託により、社員の長時間労働が解消されるだけでなく、本業に専念できることで効率的に働くことができます。

デメリットとしてはどうしても業務が縦割りになり、部門の垣根を越えた社員間での協力や会社への帰属意識が弱くなってしまうことです。

お金の面では物流の内製化から外部委託への変更は、社内で回っていたお金が外部へ流出することに他ならないので、時間と労力に余力があるなら自社で行なったほうが経済的といえます。

関連記事:

・物流管理とは?具体的な仕事内容と物流管理システムについて

・アパレルでの物流費削減のために何が必要?知っておきたい3つのポイントを解説!

まとめ

以上、食品業界における物流費削減のポイントとその方法を解説してまいりました。

働き方改革による人件費の高騰や慢性的な人手不足、さらに燃料費の上昇などこれからの時代物流に掛かる費用は上昇し続けるとの見方が大勢です。

しかしながら的確に状況を把握することと、小さな改善を積み重ねることで必ず物流コストは削減できます。あきらめずに日々の改善を楽しみながらがんばりましょう!

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